皆様こんばんは。

「発明」と聞くと何を思い浮かべられますでしょうか。発明王エジソンが作った「蓄音機」や「白熱電球」、ノーベルの作った「ダイナマイト」、ノイマンが作った今のコンピュータの原型「ノイマン型コンピュータ」等々を思い浮かべられる方は多いのではないでしょうか。「発明」を「発想」と変えた場合、コペルニクス、ガリレオの「地動説」やダーウィンの「進化論」、または仏教のような宗教も考えられますね。この他、貨幣経済(≒貨幣)や株式会社、AI技術、コメの食べ方など人間は様々な発明をしてきました。

では日本人の発明はなんであるかと考えた場合、僕はどうも「ひらがな」が最有力候補なのでは無いかと思います。何を以てそう考えるのか、それはひらがなが日本独自のものであり、話し言葉を「的確に」表現した文字であるためです。僕たちが普段当たり前に使っていながら、そのルーツには謎が多い「ひらがな」、今日はその歴史を見ていきましょう。

まずひらがな成立の歴史は以下のような流れかと考えられます。(あくまで僕の調べた範囲内であることをご了承下さい)

①日本には「文字」と呼べるもの(=書き言葉)がなかった(話し言葉はあった)

②中国から漢字が伝来する

③日本語の話し言葉の文法に即した日本風な漢文が生み出される(読み方は中国語)

④漢字の「音」を使い日本語をそのまま表記できるようにした=当て字の完成

⑤「訓読み」の発明=万葉仮名の成立

⑥草仮名の成立

⑦ひらがなの成立

⑧ひらがなが48文字に統一(明治時代)


①日本には「文字」と呼べるもの(=書き言葉)がなかった(話し言葉はあった)

日本には中国から漢字が伝わってくるまで話し言葉はありましたが、書き言葉は無かったと考えられています。亀の甲羅を火に掛けてその甲羅のひび割れ具合で占いをすることはあったようですが、それが文字を使っていたと考えて良いかの判断は難しいところです。そもそも文字があった場合、というか何故文字が必要かを考えた場合、「記録する」という点に重きを置かれることは明白な為、漢字以前の文字が無いと言うことはイコールで文字が無かったと判断することが出来ます。逆に話し言葉は存在していたと推察されます。なぜなら言葉が無いと高度なコミュニケーションがとれないからです。土器や土偶のように形あるものを作ることが出来たり、稲作が出来たり、人間に上下関係が存在する次点で話し言葉=言語があったことがわかりますね。しかしながら、書き言葉という記録の媒体が無い以上、進歩にも限界があったと僕は思います。


②中国から漢字が伝来する

正確にいつ頃伝わってきたかはわかりませんが、中国から漢字が伝わってきます。これでようやく日本人は言葉を記録するという方法を得るわけなんですね。同時に中国の思想・文化や、政治制度も伝わってきてここらで当時の日本人の文化のレベルが飛躍的に上がります。思い出してみて下さい。古墳時代とか言われて大きな墓を作ってたのに、飛鳥時代になると寺の建立を始めるなんてどう考えても日本人の賢さレベルが上がったとしか言えないでしょう。(「時代」は後の人間が便宜的に区分けするために付けただけですので、昨日まで古墳作ってたのに今日から寺院の建設しだしたとかそういうことは無いです。変化はいつの時代も目に見えない形で急速に現れます。)


③日本語の話し言葉の文法に即した日本風な漢文が生み出される(読み方は中国語)

漢字・漢文が伝わってきますが、その文法は日本人の話し言葉とは異なっていました。今でも英語や中国語がそうなんですが文法の順番として

主語(S) + 動詞=述語(V) + 目的語(O)

が英語や中国語の文法です。これに対し、日本語は

主語(S) + 目的語(O) + 動詞=述語(V)

の順番になっていました。漢文で伝わってきたものの、文法は日本語にして記録していったんですね。確かにものを書くときに毎回毎回漢文の用法に変換しなければいけないのはやはり面倒だったのかもしれません。とは言えこのときの書き言葉は以前として中国語の読みだったようです。


④漢字の「音」を使い日本語をそのまま表記できるようにした=当て字の完成

読み方が中国語のままというのが肌に合わなかったようで、日本人はとうとう中国語の音だけを用い、普段使っている日本語をそのまま表記しようと考えるようになります。こうして生まれたのが所謂「当て字」です。つまり「夜露死苦」ってことです。ただこれはこれで非常に効率が悪かった。

例として「おじいさんとおばあさん」を書くとすれば「於時威佐無都於伐阿佐無」となったようです。パソコンで打つのも面倒なんですから、これを手書きは正直しんどいですよね。


⑤「訓読み」の発明=万葉仮名の成立

というわけで今度は「一つにまとまった当て字(=単語)」を中国語に置き換えて、それを日本風に読む(訓読みする)という発明を行いました。具体的に見ていくと、

「也麻」→中国語の「山(サン)」と同じ意味→「山(やま)」と訓読みする

「加和」→中国語の「川(セン)」と同じ意味→「川(かわ)」と訓読みする

こんな感じで書きやすい日本語・話しやすい日本語を作っていきました。このように「音」と「訓」を巧みに利用して日本語を表記する「万葉仮名」という用字法を発明します。ここに来てようやく普段使っている言葉で文字を書ける一応の形が完成しました。ちなみに万葉仮名を使うことによって誕生したのが『古事記』『日本書紀』『万葉集』です。おそらくこの『万葉集』に使われた為、後々万葉仮名という名前になったのでしょう。他、聖徳太子の制定したとされる十七条の憲法は『日本書紀』に原文が載っています。

参考:「万葉仮名」-Wikipedia様


⑥草仮名の成立

万葉仮名は画期的でしたが、やはり全部漢字で書くのが面倒だったのでしょう。万葉仮名を草書体で書いたのが草仮名と言われるものになりました。万葉仮名とひらがなの間の位置づけという感じです。

参考:「草書体」-Wikipedia様


⑦ひらがなの成立

草仮名を更に簡略化したものとして僕たちの使ってる「ひらがな」が誕生します。考えてみると、当て字→万葉仮名→草仮名→ひらがなに至る流れはストレスフリーに「書く」ことを我々の祖先が追求していった副産物のような気がします。

ちなみに同時期にカタカナも成立しています。これはお寺の坊さんたちがお師匠さんの詠むお経を素早くメモするために漢字から一部抜き出して書かれたことが元になっているようです。例として「江」→「エ」、「多」→「タ」、「奴」→「ヌ」。こんな感じです。

ひらがなが成立したのは平安時代頃ですが、出来たてほやほやのひらがなは宮中の男性達にはあまり評判が良くなかったようで、男子たるもの漢字を使いこなすというのが一般的だとされていました。「男もすなる日記というものを女もしてみんとてするなり」の書き出しで有名な土佐日記、作者は紀貫之、男性ですね。わざわざオカマ女性と言う設定にしてまでひらがなを使ったということは、漢字だけではできない細やかな表現を使わざるを得なかったと言うことだと思われます。

またこの時にひらがなの普及に一役買った人たちが紫式部を初めとする宮中の女性達だったようです。特に源氏物語のように世界規模で見ても名だたる名作が漢字とひらがなによって書かれたことで日本人の中にひらがなが浸透していきました。昔から女性は新しく、実用的なものに敏感だったと言うことなんでしょうね。

参考:「平仮名」-Wikipedia様

参考:「片仮名」-Wikipedia様


⑧ひらがなが48文字に統一(明治時代)

さて、かなり時代が飛びます(すっとぼけ)。

平安時代に成立したひらがなですが、その総数は200を超えるもので同じ読みでも複数の字が同時に存在すると言う状況でした。複数の字があるというのは教育上不便であるとの理由からか、明治33年に小学校令が改正されたことを契機に現在僕たちが使っている48文字に統一されることとなります。選ばれなかったひらがな達は「変体仮名(変態ではない)」と呼ばれ普段目にする機会は少なくなりました。昔ながらの定食屋さんとか格式高い料亭ののれんに見慣れないひらがなが使われていることがありますが、あれが所謂変体仮名ですね。明治より前に存在したお店にはそういう名残を今も見ることが出来ます。

参考:「変体仮名 店」でGoogle画像検索

参考:「変体仮名」-Wikipedia様


以上「ひらがな」の歴史をご紹介しました。

普段何気なく使っているひらがなが実は多くの時代を経て、沢山の人たちの手を経て今に伝わっているんですね。調べながら、「日本人って昔から頑固だったんだなぁ」と思いました(悪い意味では無い)。

中国から漢字が伝わってきた際に文字の持つ魅力に惹かれつつも、かたくなに自分たちの話し言葉(文法や読み)を変えること無く、試行錯誤して書き言葉に昇華していったその頑固さは今更ながら賞賛に値すると思います。

あと、中国語とか英語の文法と日本語の文法が違うのは面白いですね。個人的には日本人が農耕民族で、かつ日本が島国だったことに理由があるような気がします。ユーラシア大陸に位置する中国では先に結論(述語・動詞)を持ってくる方が「生きるため」に必要だったのでしょう。イギリスは島国ですが、狩猟民族たるバイキングの子孫が創った国ですからこれまた速い情報伝達の手段が必要だったのでは無いかと思います。

 

このような複雑な歴史を持って生まれた日本語ですから、確かに外国の方からすれば習得が難しいと言われるのも納得いきますね。文法も違えば読み方も音と訓で分けなければならず、漢字があるかと思えばひらがなもカタカナもある。こんな難解な言語を一から勉強された外国の方は本当凄いと思います。もしかしたらそういう方々の方が日本語の持つ魅力を僕たち日本人よりも感じているのかもしれませんね。

さて、何よりも僕は今回

「変態仮名」

という単語を知っただけで満足です。冗談です。正式には変体仮名です。悪しからず。

それでは今日はこの辺で。