”これは下町のつぶれかけた小さな町工場がロケットエンジンの部品開発を巡り、その技術と誇りを武器に大企業と互角に渡り合った、宇宙に夢を懸けた人々の挑戦の物語である。”

皆様こんばんは。

『半沢直樹』の著者である池井戸潤氏原作のTBSテレビドラマ『下町ロケット』第1話~第5話の名言を集めました。当記事は本編のネタバレを含んでおりますので、その点ご了承下さい。また名言の後に簡易的なあらすじや僕の感想、最後に小ネタも記載しております。それでは。


【第1話】

”先生、私は常々世の中には2つの規律があると思っています。「倫理」と「法律」です。人間が滅多なことで殺人を犯さないのは法律で決められているからじゃ無い。そんなことしちゃいけない、という倫理に支配されているからですよ。でも、会社は違う。会社には倫理なんて必要ない。法律さえ守っていれば何をしたって罰せられることは無い。やり方次第で相手企業の息の根を止めることだって出来る。”

-ナカシマ工業 三田公康(第1話)

一言:「なんでいきなり敵側の言葉なんだよ!」というツッコミが聞こえてきそうです。でも僕はこの言葉は人間の創った世界を巧く表現していると思います。全ての人間が法の下にあるという法治国家において、真実は法の下で「造られた」真実こそが正しいものになってしまう……。ナカシマ工業は佃製作所の造った「ステラエンジン」を模倣し、特許を出願します。そして今度は佃製作所がステラエンジンを改変した際に、自分たちの特許を侵害したとして裁判を起こすのです。


”オレが皆に食らわれてることはわかってる。でもオレは、オレはこの会社が好きだ!だから経理のことは精一杯やってきた。皆が社長に言い辛いこともいの一番で言ってきた。会社を思う気持ちは誰にも負けてない!オレが銀行に入ったのは、能力や技術力があるのに日の目を見ない企業を助けたかったからです。銀行員としてモノ作り日本の手助けをしたかったからです。それがオレの夢でした。でも…叶わなかった。社長、あなたは違う。あなたは夢に愛されている。だから、逃げちゃ行けない。お願いだから、諦めないで下さい。佃製作所は良い会社です。本当に良い会社です。だから、なんとしても守りたい。守りたいんだ……!”

-佃製作所 殿村直弘(第1話)

一言:白水銀行から出向してきた殿村経理部長が、佃がナカシマ工業への買収に応じよう諦めかけた際に投げかけた言葉です。これまで殿村は経理に重きを置くその言動から、他の社員達に良い目で見られていませんでした。しかし、ここで本音をさらけ出したことで今後佃製作所の頼れる経理部長としての存在を強めていくきっかけになります。今まで第三者の銀行員と思っていた殿村の心からの訴えにより、佃は再起を誓うのです。


”社員数1万5千人、年商6000億、一部上場、それがどうした!この佃製作所には、そんなものとは比較に出来ない、世界に通用する「技術力」がある。それを培ってきた最高の「社員達」がいる!その宝を「マネ」シマなんぞに渡してたまるか!いい歳したオッサンが夢見て何が悪い、町工場が夢見て何が悪いんだ!銀行に見捨てられ、取引先からも見放され、それでもまだこの製作所には「君たち」がいる!だからオレは闘うことにした。”

-佃製作所 佃航平(第1話)

一言:殿村の言葉を受け、弁護士の神谷と共にナカシマ工業への逆訴訟を決めた佃が社員達に対して贈った言葉です。小さな会社だった頃から共に技術を磨き、酸いも甘いも分かち合った社員達だからこそ佃の飾らない言葉は胸に刺さるものがあったのでは無いでしょうか。技術や人を大事にする社風は日本の大企業にも見習ってほしいものです。


【第2話】

”どんなに素晴らしい発明にもそのたった1つの成功の裏に、何百、何千という失敗がある。その積み上げられた失敗を、技術者達の報われなかった努力を馬鹿にすることは許さない。

技術者は皆自分の無力さを知ってるよ。毎日壁にぶつかってばかりだからな。だからこそ必死、腕を磨いて、徹夜で開発に没頭して、次こそは!って信じてモノを作り続けてるんだ。何でかわかるか?面白いんだよ。昨日出来なかったことが、今日できるようになる。今日わからなかったことが、明日わかるようになる。それを自分の技術でやれたら…最高だ!

裁判長、これだけは言っておきます。例えこの裁判に負けたとしても、中島に特許を奪われたとしても、屁でもありません。培ってきた技術力だけは決して奪えない。正義は我にありだ!”

-佃製作所 佃航平(第2話)

一言:佃航平が特許侵害の訴訟に際し、法廷に立った時の言葉です。今を生きる僕たちにとって便利なものが身の周りにあることは当たり前のことです。でもそれらのもの一つ一つの背景にはどこかの誰かが、誰かの幸せ・便利さを願って造ったものであることはあまり気にされていません。この苦悩する技術者の本音の代弁に裁判長は心を動かされるのです。なんだかプ『ロジェクトX』や『プロフェッショナル』が思い浮かばれますね。


”良いときも悪いときも信じあっていくのが企業とメインバンクでしょうが。にもかかわらず、自分に都合の良いときだけすり寄ってきて、ダメとなったら手のひらを返して見捨てる。(中略)あんたらみたいな腐った銀行マンがこの国の未来さえも腐らせるんだ。どうしてもうちと取引したいのなら、その腐りきった態度を改めてから出直してこい!”

-佃製作所 佃航平(第2話)

一言:裁判で金に困窮している時は佃製作所の「特許」を「ガラクタ」「道楽」と蔑み、融資を行わなかった白水銀行の人間に放った言葉です。これは痛快ですね!銀行マン役をされた東国原さんと春風亭昇太さんの悔しそうな顔が絶妙でした。第2話は上のセリフと相まって勧善懲悪で爽快なストーリーでした。


【第3話】

”リスクの無いところにビジネスがありますか?”

-佃製作所 殿村直弘(第3話)

ナカシマ工業との訴訟問題が解決してた矢先に待っていたのは、「特許」を巡る佃製作所内での揉め事でした。純国産ロケットの全部品の内製化を企図する帝国重工は佃製作所にロケットエンジンのキーパーツであるバルブシステムの特許で先を越されてしまいます。そこで帝国は20億円という破格の金額で佃製作所から特許を買い取ろうとします。会社の経営に不安を抱く一部の社員はこの話に乗り、特許売却路線で会社の建て直しを要望しますが、佃や技術部長の山崎はバルブの供給に拘ります。彼ら技術者にとってバルブの供給はロケットエンジンの製作を手がけることと同義であり、それは技術者としての夢でもありました。まとまりを欠けた中で、元銀行員として経理部長の殿村は「特許の売却もしくは使用契約」と「部品の供給」どちらが10年先の佃製作所にとって有用かを諭します。この言葉はその時の彼の発言です。そしてここから佃製作所は部品供給に注力し出すのです。

一言:これは経営者にとってはいつも頭の中を回っている感覚の様な気がします。社員を雇うにしろ、解雇するにしろ、新しい企画を立てるにしろ、新たな工場を造るにしろ、何かしらのアクションにはそれ相応のリスクが伴います。それを天秤にかけた際にメリットがデメリットを上回っていればアクションを起こせるのですが、それが花開くには時間がかかることが多いです。つまり経営者にとって必要なのは目の前の問題だけでは無く、遠い未来のビジョンもしっかりと見据えていなければいけないという均整の取れた姿勢であることを示唆する言葉だと思いました。


”社長は誰よりも体張って、リスクしょって本気で夢を叶えようといているんだ。オレはそんな社長の下で一緒に物作りを出来て良かったよ。この会社に入れて良かった。…お前らはどうなんだ?”

-佃製作所 山崎 光彦(第3話)

部品供給路線で歩み始めた佃製作所ですが、社内は決して一枚岩ではありませんでした。明日の生活を心配する一部の社員や、ロケットエンジンに重きを置いて自分の担当した部品に光が当てられていないと錯覚する真野を中心とした技術部の社員は佃の方針に反発の感情をあらわにします。今よりもっと良い条件で仕事が出来る職場を求め、佃製作所を立ち去ろうとする技術部の社員達ですが、その時技術部長の山崎がこの言葉をかけます。待遇や給料よりも共に夢を叶えようと自己実現の果たすことの良さを彼なりの言葉で説くのです。

一言:第3話は上の言葉と合わせて「夢」と「現実」の対比を描写しているようです。勿論、これはドラマの世界であり、実際「夢」を追い求めるだけでは理不尽な「現実」が立ちはだかるのが世の常です。でも、だからこそ、「夢」にまっすぐな「ドラマ」があっても良いんじゃ無いかなと僕は思います。


【第4話】

”そんなんで諦めるんですか?(中略)いくら担当者が悪意の評価をしたとしても、帝国重工にだってきちんと数字を読む人間はいるはずです。正当な評価をしてくれる人が必ずいるはずです。ですから社長、どーんとぶつかっていきましょうよ。佃製作所は良い会社なんです。元銀行員を信用して下さい。”

-佃製作所 殿村直弘(第4話)

”あんな風に偉そうな顔して粗探しするのがテストなのか?それで俺たちの何がわかるって言うんだよ!部品供給が良いとか悪いとかそういう問題じゃ無い。これはオレ達のプライドの問題だ。見下されっぱなしで黙ってられるか!”

-佃製作所 江原春樹(第4話)

佃は社内を見て貰うことで、佃製作所のバルブシステムの素晴らしさを帝国重工の財前に認めて貰うことに成功します。しかしながらロケットの内製化に拘る(拘らされる)帝国重工の水原本部長に、現場主任の富山は「審査」という形でふるい落とすことで佃製作所からの部品供給をやめさせることが出来ると進言します。その審査は非常に厳しく、要求は理不尽と言えるものでした。一度は諦めかけた佃製作所ですが、自分たちが今までやってきたことを信じ、2日目の審査に立ち向かうのです。

一言:正直会社のことを自分のことのように考えてくれる人間が社内にいたらどれほど嬉しいでしょうか。多くの人はサラリーマンとして雇われの身で難しいかもしれませんが、一人一人が経営者の視点を持つことが出来ればその会社は大きく飛躍できます。経営者は「従業員(この言葉がそもそも良くない)」に労働を求めるより前に期待すべきことがある、と考えさせられますね。


【第5話】

”オレはな、仕事ってのは2階建ての家みたいなのもんだと思うんだよ。全体を支える1階部分は飯を食ったり生活するために金を稼ぐためにある。でもそれだけじゃ窮屈だろ。だから夢を見るための2階部分が必要なんだ。夢だけじゃ家は潰れちまうが、飯だけ食えてもそんな家は狭くて退屈だろ。だから仕事には夢が必要なんだよ。”

 -佃製作所 佃航平(第4話)

社員の奮闘により、審査をもう一歩の所までクリアした佃製作所ですが、技術部の真野の工作により帝国重工に出荷するはずのバルブと粗悪品のバルブがすり替えられるという事態が発生します。そのことで審査はパスできないかと


”パパみたいに夢を諦めないで頑張ろうとしたよ。けど、やればやるほど苦しくて。どんどんどんどんバドミントンのこと嫌いになっていく気がして……。”

-佃利菜(第5話)

自分の好きなバドミントンで強くなることを目標に、そしてスポーツ推薦で慶応大学を受験しようとしていた航平の娘・利菜ですが、ライバルの子たちに実力が及ばずレギュラーの座を外されてしまいます。そのことを航平に打ち明けられずに、すれ違う日々を過ごしていた親子ですが、河原で昔のように共にバドミントンをすることでようやくわだかまりが解けていきます。利菜は彼女なりに航平の背を見て夢にまっすぐ向かっていましたが、自分の好きなことを実力不足で諦めざるを得なくなった現実を、その悔しさを彼女なりの言葉で航平に打ち明けるのです。

一言:夢に向かって努力するのは大事なことですが、だからこそ苦しい想いもしなければならないときがあります。そういう時、夢を諦めるという選択ももしかしたら必要になってくるかもしれません。しかし、夢を諦めるという悔しさ、また新たな夢を見つけるという勇気は人間の成長につながることは言うまでもありません。


”何かを成し遂げようという大きな夢の前では大企業も中小企業も、帝国重工も佃製作所もない。良いモノを造りたいというたった一つの想い、技術者としてのプライドがあるだけだ。”

 -佃製作所 佃航平(第5話)

無事に部品供給の試験にパスした佃製作所ですが、最終実験の段階でエンジンに異常が見つかりバルブシステムの不備が疑われます。自分たちの技術に絶対の自信がある佃製作所の技術者達は原因の解析を試みますが、失敗の理由がわからず途方に暮れてしまいます。最後の最後で航平は信じている自社のバブルを解体する覚悟を決めるのです。解体してみるとそこには何かが擦れた痕が残っていました。それを解明していくとバルブを正確に作動するためののフィルターに問題があることが判明します。それ以前の実験で使用されていたフィルターは佃製作所製のもので、今回の実験で使用したものは帝国重工製でした。自社開発を第一とする帝国重工の技術者がフィルターを独断で変更したことにより起きてしまった事態だとわかります。ロケットの完全内製化に拘る帝国重工技術者の彼らなりの想いがこの不手際を引き起こしたのです。それを受けて佃はこの言葉を投げかけます。

一言:これは技術者の本音を実によく表しているのではないでしょうか。人類の更なる幸福を願い、己の全てを技術へと昇華させる。器に志を合わせるのでは無く、志に器を合わせる。まさにその通りだと思います。


”懸けてみるか。ドン底から這い上がった男に。”

-帝国重工 藤間秀樹(第5話)

様々な障害を乗り越え財前率いる帝国重工技術部に佃製のバルブは認められました。しかし、最後に大きな関門が待ち構えているのです。それはキーデバイスの全てを内製化に拘る帝国重工社長・藤間の説得でした。初めは交渉相手として佃製作所とやりあった財前は佃製作所バルブの技術的優位性、コストパフォーマンスの高さ、そして何より佃航平の想いを携えて藤間社長の説得に挑みます。

一言:藤間も社長に就任するより前は技術者であり、7年前佃が製作したエンジンが画期的であることを知っていました。そしてロケット打ち上げから7年間夢にまっすぐ突き進んできた佃航平と、同様に7年間ロケット打ち上げを夢見てきた自分の想いが重なったのでしょう。夢を実現させるという想いは大企業の社長をも動かす、感動的なエピソードだったと思います。


小ネタ集

・佃製作所を苦しめた白水銀行は『半沢直樹』にも登場しています。白水銀行との関係を絶った佃たちが新しくつきあいを初めたのは半沢の務める「東京中央銀行」ですね。こういう同じ著者内での同一世界観というのはこの後どこかでつながりそうで面白いです。

・佃製作所社長の佃航平とその妻・沙耶はどちらも慶應義塾大学の理工学部出身という設定で、娘の利菜も慶應理工学部を目指すことになります。なんか慶應びいきが凄いなと思ったら、著者の池井戸潤氏は慶應出身でした。

・佃製作所のバルブを採用したロケットが打ち上がる7年前、佃は「セイレーン」というロケットエンジンを作っていました。これは画期的なエンジンでしたが、トラブルにより打ち上げは失敗。佃は責任を負い宇宙事業開発機構を退社します。このセイレーン、名前の元になっているのはギリシャ神話の海の怪物なんです。美しい歌声で船乗り達を誘惑し、難破や溺死を導くという特徴を持っています。難破に溺死とは……なんか名前を付けた次点でセイレーンの失敗は必然だったのかもしれません。余談ですがセイレーンは昔から多くの物語に登場し、古くはホメロスの『オデュッセイア』、ゲーテの『ファウスト』にその名前があります。そして現在にも引き継がれ、多くのゲームにも登場します。パズドラやモンスト、遊戯王にもその名前のキャラクターがいますよ。


以上『下町ロケット』の名言集・感想・小ネタでした。

ドラマをまとめてレビューするというのは初めて行いましたが難しいですね。物語のあらすじを先に書くべきか、感想だけを書くべきか。初めてこの作品を見る人にどこまで説明できるか色々考えた結果、この形で記事にしました。拙いところも多々あったかと思いますがご了承下さい。でもこういう中々表に出てこないような現場の葛藤に注視したドラマも面白いですね。この作品は夢にまっすぐで泥臭くとも「純粋な」技術者たちの姿を描く一方で、大企業間でのつながりや思惑の交錯など「汚い」人間も垣間見えます。一人一人に感情があり、夢があり、思惑がある。それはドラマではありますが「リアル」でもあると思いました。

それでは今日はこの辺で。